保存行為

保存行為とは、共有されている不動産について、その現状を維持するために行う行為のことで、共有者が単独で行うことができるもののことです。

実家を複数の相続人で共有している場合、その不動産に対して何をするにも全員の同意が必要というわけではありません。2023年の民法改正で整理されたルールによれば、共有物に対する行為は、影響の大きさに応じて3つに分類されます。「保存行為」(現状維持のための行為)は共有者が単独でできる、「管理行為」(利用・改良のための行為)は持分の過半数の同意で決められる、「変更行為」(売却や大規模な変更)は共有者全員の同意が必要、という区分です(法務省確認)。

保存行為の具体例としては、老朽化した屋根や外壁の修繕、不法に占拠している第三者への明け渡し請求、法定期限内での相続登記の申請などが挙げられます。これらは、放置すると不動産の価値が損なわれたり、権利関係が不安定になったりするため、共有者の誰か1人の判断で、緊急に対応できるようにする趣旨です。

実務上悩ましいのは、「これは保存行為か、それとも管理行為・変更行為にあたるのか」の線引きが、必ずしも明確でない場合があることです。たとえば、部分的な修繕は保存行為とされやすい一方、リフォームの規模が大きくなると管理行為や変更行為と評価されることもあります。共有名義の実家について何らかの対応が必要になった場合、他の共有者との関係を良好に保つためにも、判断に迷う行為については、事前に共有者間で相談しておくか、司法書士・弁護士に確認することをおすすめします。

実家が空き家のまま放置され、屋根や外壁が破損している場合、それを修理する行為は保存行為にあたるため、共有者の1人が単独で業者に依頼して修繕することができます。一方、その修繕の範囲を超えて、大規模なリフォームや建て替えを行う場合は変更行為とみなされ、全員の同意が必要になります。「どこまでが保存行為か」の判断に迷うときは、あらかじめ他の共有者に一声かけておくことで、後になって「同意していない」といったトラブルを避けやすくなります。

関連項目:共有持分、遺産分割