実家の相続を考え始めたとき、意外と確かめられていないのが「そもそも今、実家は誰の名義になっているのか」です。父の名義だと思っていたら祖父のままだった、建物だけ母との共有になっていた、建物がそもそも登記されていなかった――。こうしたことは、書類を取って初めて分かります。
名義の確認は、相続登記・売却・相続税の申告など、その後のどの手続きにも関わる最初の一歩です。この記事では、法務局で取る「登記事項証明書」の取り方と、どこを見れば名義が分かるのかを順番に整理します。
この記事の結論
実家の名義は、法務局で土地・建物それぞれの登記事項証明書を取得し、「権利部(甲区)」の最後の所有者欄を見れば確認できます。証明書は相続人でなくても誰でも、全国どの法務局でも請求でき、手数料は窓口で1通600円、オンライン請求なら490〜520円です。請求には住所ではなく「地番」「家屋番号」が必要なため、先に固定資産税の課税明細書や権利証で確認しておくとスムーズです。
この記事で分かること
- 登記事項証明書とは何か、誰が・どこで取れるか
- 請求に必要な「地番」「家屋番号」の調べ方
- 窓口・郵送・オンラインの3つの取り方と手数料
- 証明書のどこを見れば名義・共有・抵当権が分かるか
- 名義を確認したあとに起こりやすい「想定外」と次の一歩
登記事項証明書とは
登記事項証明書は、法務局が管理している不動産の登記記録(登記簿)の内容を証明する書類です。昔は「登記簿謄本」と呼ばれていたもので、今も同じ意味で使われることがあります。
土地と建物は別々の不動産として登記されているため、実家の名義を確認するには、土地と建物の両方の証明書が必要です。土地が複数の筆(区画)に分かれている場合は、筆ごとに1通ずつ取ります。
相続人でなくても、誰でも取れます 登記事項証明書は、所有者や相続人に限らず誰でも請求できます。委任状も、亡くなった方との関係を示す戸籍も必要ありません。また、管轄の法務局でなくても、全国どの法務局の窓口でも取得できます。遠方の実家でも、住まいの近くの法務局で取れるということです。
証明書の種類
窓口やオンラインで請求するとき、何種類かの証明書から選ぶことになります。実家の名義確認であれば、迷ったら「全部事項証明書」を選べば足ります。
| 種類 | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 全部事項証明書 | 過去の所有者の移り変わりも含めた全記録 | 名義の確認、相続登記・売却の準備(通常はこれ) |
| 現在事項証明書 | 現在効力のある事項だけ | 今の名義と抵当権だけを手短に確認したいとき |
※請求書には「共同担保目録」を付けるかどうかの欄もあります。抵当権がほかの不動産と一緒に設定されているかを確認したいときに付けます。
請求の前に「地番」と「家屋番号」を調べる
ここが最初のつまずきどころです。登記事項証明書は、普段使っている住所(住居表示)ではなく、土地は「地番」、建物は「家屋番号」で特定して請求します。住居表示が実施されている地域では、住所と地番が一致しないことがよくあります。
地番・家屋番号は、次のような書類で確認できます。
| 書類 | 確認できること | 入手先 |
|---|---|---|
| 固定資産税の納税通知書(課税明細書) | 土地の所在・地番、家屋番号 | 毎年春ごろに所有者(または相続人代表者)あてに届く |
| 権利証(登記済証)・登記識別情報通知 | 取得時点の所在・地番・家屋番号 | 実家の書類の保管場所 |
| 固定資産課税台帳(名寄帳)の写し | その市区町村内で課税されている土地・家屋の一覧 | 実家のある市区町村の資産税担当窓口 |
書類が手元にない場合 課税明細書も権利証も見つからない場合は、法務局の窓口で住所から地番を調べる方法を相談できます。法務局に備え付けの地図などで確認することになるため、実家の場所が分かる地図を持参すると話が早く進みます。
登記事項証明書の取り方と手数料
取り方は、大きく分けて3つあります。2026年10月時点の不動産登記事項証明書(1通)の手数料は次のとおりです。
| 取り方 | 手数料(1通) | 特徴 |
|---|---|---|
| 法務局の窓口で請求 | 600円 | その場で受け取れる。全国どの法務局でも可 |
| オンラインで請求し、郵送で受け取る | 520円 | 平日に休みを取らずに済む。数日で届く |
| オンラインで請求し、窓口で受け取る | 490円 | 最も安い。指定した法務局で受け取る |
| 郵送で請求(請求書と収入印紙を郵送) | 600円 | 返信用封筒と切手が別途必要 |
1. 地番・家屋番号を書き出す
土地と建物を分けて、すべての地番・家屋番号を書き出します。土地が複数筆ある場合は漏れがないようにします。
2. 取り方を選ぶ
平日に法務局へ行ける場合は窓口、行けない場合は法務省の「登記・供託オンライン申請システム」からオンライン請求を選びます。オンライン請求は、手数料をインターネットバンキング等で納付します。
3. 請求書を書いて提出する
窓口では備え付けの請求書に、所在・地番(建物は家屋番号)、証明書の種類、通数を書きます。手数料は収入印紙で納めます。
4. 受け取った証明書を確認する
土地・建物の通数がそろっているか、地番・家屋番号に誤りがないかを確認します。
「見るだけ」なら登記情報提供サービスも 民間の一般財団法人が運営する「登記情報提供サービス」を使うと、登記記録の内容をパソコンで閲覧・印刷できます。ただし証明書としての効力はないため、相続登記や金融機関の手続きに提出する書類としては使えません。まず名義だけを確かめたいときの選択肢です。
登記事項証明書のどこを見れば名義が分かるか
証明書は大きく「表題部」と「権利部」に分かれ、権利部はさらに「甲区」と「乙区」に分かれています。
| 欄 | 書かれていること | 見るポイント |
|---|---|---|
| 表題部 | 土地:所在・地番・地目・地積/建物:所在・家屋番号・種類・構造・床面積 | 請求した不動産で間違いないか |
| 権利部(甲区) | 所有権に関する登記(誰が、いつ、どんな原因で所有者になったか) | いちばん下(最新)の所有者が現在の名義人 |
| 権利部(乙区) | 抵当権など、所有権以外の権利 | 抵当権が残っていないか(下線で抹消されていれば消えている) |
甲区は、上から古い順に記録が積み重なっています。下線が引かれた記載は抹消済みの事項です。順位番号が最も大きい、下線のない所有権の登記を見て、名義人の氏名・住所を確認してください。
よく出てくる記載の意味
- 「原因 昭和○年○月○日売買」:その日に売買で取得した、という意味です。
- 「原因 ○年○月○日相続」:相続で名義が移った記録です。祖父から父への相続登記が済んでいるかどうかがここで分かります。
- 「共有者 持分2分の1」:1人ではなく複数人の共有名義になっている状態です。父と母の共有になっていることもあります。
名義を確認して分かることと、次の一歩
証明書を取ると、予想と違う結果が出ることがあります。代表的なケースと、次に読むとよい情報を整理しました。
| 確認した結果 | 意味すること | 次の一歩 |
|---|---|---|
| 亡くなった親の単独名義 | 通常の相続登記で名義を移せる | 相続人を確定し、遺産分割協議へ |
| 祖父母など、さらに前の世代の名義 | 相続登記がされないまま次の相続が起きている(数次相続) | 祖父母の代からの相続人をたどる必要がある |
| 親と別の人の共有名義 | 親の持分だけが相続の対象になる | 共有者(もう一方の親など)の状況も確認 |
| 乙区に抵当権が残っている | ローン完済後も抹消されていない可能性 | 抵当権抹消登記を検討 |
| 建物の登記記録が見つからない | 建物が未登記の可能性 | 表題登記の要否を確認 |
相続登記には期限があります 2024年4月から相続登記は義務になり、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。名義が祖父母のままだった場合も対象になるため、確認できた段階で早めに方針を考えておくと安心です。
親が持っていた不動産を一覧で確認したいとき
実家以外にも土地を持っていたかもしれない、という場合は、2026年2月2日から始まった「所有不動産記録証明制度」が使えます。相続人が法務局に請求すると、亡くなった方が登記名義人になっている不動産を一覧にした証明書を受け取れます(窓口請求で1通1,600円)。
ただし、登記簿上の氏名・住所が請求時の検索条件と一致しない不動産(引っ越し後に住所変更登記をしていない場合など)は一覧に載らないことがあります。過去の住所も含めて検索条件を工夫するか、市区町村の名寄帳とあわせて確認すると漏れを減らせます。
誰に相談するか
| 内容 | 相談先 |
|---|---|
| 地番の調べ方・証明書の取り方 | 法務局の窓口 |
| 名寄帳・課税明細書の取得 | 実家のある市区町村の資産税担当窓口 |
| 名義が祖父母のまま・共有など、相続登記の進め方 | 司法書士 |
| 建物が未登記だった場合の表題登記 | 土地家屋調査士 |
よくある質問
Q. 登記事項証明書に有効期限はありますか。 A. 証明書そのものに法律上の有効期限はありませんが、提出先によっては「発行から3か月以内」などの期限を求められることがあります。名義の確認用に取ったものを、後の手続きにそのまま使えるとは限りません。
Q. 住所しか分からず、地番がどうしても分かりません。 A. 法務局の窓口で相談すると、備え付けの地図などから地番を調べる方法を案内してもらえます。実家の位置が分かる地図を持参してください。
Q. 固定資産税の納税通知書の名義と、登記の名義は同じですか。 A. 同じとは限りません。納税通知書は相続人代表者あてに届いていることがあり、登記簿上の名義とは別です。名義の確認は、必ず登記事項証明書で行ってください。
まとめ・次にすること
- 実家の名義は、法務局で土地・建物それぞれの登記事項証明書を取り、権利部(甲区)の最新の所有者欄で確認します
- 証明書は誰でも、全国どの法務局でも取得でき、手数料は窓口600円、オンライン請求なら490〜520円です
- 請求には住所ではなく地番・家屋番号が必要です。固定資産税の課税明細書や権利証で先に確認しておきましょう
- 祖父母名義・共有名義・抵当権の残存・建物の未登記など、想定と違う結果が出たら、早めに司法書士などに相談して方針を決めてください