「相続登記は司法書士に頼むもの」というイメージを持っている方も多いと思いますが、実際には自分で申請することもできます。とはいえ、「法務局に何度も通うことになるのでは」「平日に休みを取れない」といった不安から、結局踏み出せずにいる方も少なくありません。ここでは、自分で申請する場合に法務局へ行く回数の目安と、自分でやるより司法書士に頼んだほうが早いケースを整理します。
この記事の結論
相続人が少なく遺産分割協議もまとまっているなど、名義関係が単純なケースであれば、相続登記は自分で申請できます。窓口に何度も足を運ぶ必要はなく、郵送・オンライン申請を使えば法務局へ行く回数を0回にすることも可能です。ただし、名義が祖父母の代など数世代前のまま残っている、相続人が多い、話し合いがまとまらないといった場合は、書類集めだけで時間がかかるため、司法書士に依頼したほうが結果的に早く終わります。
この記事で分かること
- 相続登記を自分で申請できるかどうかの判断基準
- 窓口・郵送・オンラインそれぞれで、法務局に行く回数の目安
- 自分で申請する場合の全体の流れと必要な時間
- 司法書士に依頼したほうが早いケース
自分で申請できるかどうかの判断基準
| 状況 | 自分での申請 |
|---|---|
| 相続人が1〜2人で、遺産分割協議もまとまっている | 向いている |
| 名義が亡くなった親のまま(直近の相続) | 向いている |
| 名義が祖父母の代など数世代前のまま残っている | 相続人が想定より多くなりやすく、司法書士向き |
| 相続人の中に連絡が取れない人、話し合いがまとまらない人がいる | 登記の前段階(協議)に時間がかかるため、まず相続人と連絡が取れない場合の進め方を確認 |
| 平日に役所・法務局へ行く時間がほとんど取れない | 郵送・オンライン申請、または司法書士への依頼 |
登記そのものの難易度よりも、「相続人を確定させる戸籍集め」と「話し合いがまとまっているか」で、自分で進められるかどうかが決まります。
法務局に行く回数の目安
相続登記の申請は、窓口に行かなくても完結させられます。申請方法によって、法務局へ足を運ぶ回数は次のように変わります。
| 申請方法 | 法務局へ行く回数の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 郵送申請 | 0回 | 書類一式と返信用封筒を郵送するだけで完結。補正(書類の不備修正)が生じた場合も、多くは郵送・電話でのやり取りで対応できる |
| オンライン申請 | 0回(登記識別情報通知の受け取り方法により1回程度) | 「登記・供託オンライン申請システム」で申請書を作成・送信。一部の添付書類は郵送での別送が必要になることがある |
| 窓口申請 | 1〜2回 | 申請時に1回、登記識別情報通知の受け取りに1回が目安。窓口ではその場で簡単な形式確認を受けられる場合がある |
「相続登記は法務局に本人が出頭しなければならない」という思い込みから、平日の休みを心配して後回しにしてしまう方もいますが、そうした決まりはありません。郵送・オンラインを使えば、平日に休みを取らずに申請を完結させることも可能です。
自分で申請する場合の流れと必要な時間
1. 名義と相続人を確認する(目安:1〜2か月)
登記事項証明書で実家の名義を確認し、戸籍を出生から死亡までさかのぼって相続人を確定します。戸籍が複数の市区町村にまたがる場合、取得までに数週間かかることもあります。
2. 遺産の分け方を決める(目安:数日〜数週間)
遺言書がある場合はその内容に従い、ない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、協議書を作成します。ここで意見が割れると、登記の前段階で長引くことになります。
3. 必要書類をそろえる(目安:数週間)
戸籍謄本一式、住民票、固定資産評価証明書、遺産分割協議書、印鑑証明書などを集めます。必要書類の一覧は相続登記の申請方法で詳しく解説しています。
4. 登記申請書を作成する(目安:数時間〜1日)
法務局が公開している様式・記載例をもとに、不動産の表示や登録免許税などを記載します。
5. 管轄法務局へ提出する
窓口・郵送・オンラインのいずれかで提出します。不動産所在地を管轄する法務局に申請する点に注意してください。
6. 登記識別情報通知を受け取る(目安:1〜2週間)
審査が完了すると、新しい名義人あてに登記識別情報通知(権利証にあたる書類)が発行されます。
全体として、戸籍集めから完了まで2〜3か月程度が目安ですが、時間がかかっているのは「登記の手続き自体」ではなく「書類を集める作業」であることがほとんどです。
司法書士に依頼したほうが早いケース
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 名義が祖父母の代など数世代前のまま | 相続人が想定より多くなり、戸籍集めだけで数か月かかることがある |
| 相続人が5人以上いる | 全員分の戸籍・印鑑証明書の収集・連絡調整に手間がかかる |
| 申請書に不備が出て補正が続いている | 司法書士は書式に慣れているため、補正のやり取りが発生しにくい |
| 相続税申告など他の手続きと並行して進めたい | 税理士・司法書士が連携して進められることがある |
自分で申請すれば司法書士報酬(目安5万〜10万円程度)を抑えられますが、戸籍集めに手間取ると、かえって相続登記の義務化の期限(不動産を取得したことを知った日から3年以内)に近づいてしまうこともあります。費用の詳細は相続登記の費用はいくら?で解説しています。
誰に相談するか
| 内容 | 相談先 |
|---|---|
| 申請書の作成・書類収集の代行 | 司法書士 |
| 管轄法務局の確認、様式の入手 | 法務局(窓口・ウェブサイト) |
| 固定資産評価証明書の取得 | 市区町村の税務担当窓口 |
| 遺産分割協議がまとまらない | 弁護士 |
よくある質問
Q. 相続登記は必ず本人が法務局に出向く必要がありますか。 A. いいえ。郵送・オンラインでの申請ができるため、窓口に一度も行かずに完結させることも可能です。
Q. 自分で申請して、書類に不備があったらどうなりますか。 A. 法務局から補正の連絡が入り、指定された期間内に修正すれば手続きを続けられます。郵送・電話でのやり取りで対応できることが多く、そのために再度出向く必要は基本的にありません。
Q. 途中で自分では難しいと感じたら、司法書士に切り替えられますか。 A. 可能です。戸籍などすでに集めた書類はそのまま使えることが多いため、無駄にはなりません。書類集めの途中で判断がつかなくなった場合は、早めに相談することをおすすめします。
まとめ・次にすること
- 相続人が少なく話し合いがまとまっているなど、名義関係が単純なケースは自分で申請できます
- 郵送・オンライン申請を使えば、法務局へ行く回数を0回にすることも可能です
- 名義が数世代前のまま、相続人が多い、といった場合は司法書士に依頼したほうが結果的に早く終わります
- 時間がかかるのは登記の手続き自体ではなく、戸籍などの書類集めであることがほとんどです
次にすることは、登記事項証明書で名義を確認し、相続人が何人いそうかを把握することです。そのうえで、自分で進めるか司法書士に依頼するかを判断してください。