相続登記が義務化されたことは知っていても、「実際に何を、どこへ、どう提出すればよいのか」が分からず手が止まっている方も多いと思います。
登記そのものは難しい手続きではありませんが、必要な書類を集める作業に時間がかかります。ここでは、書類の準備から法務局への提出までの流れを順を追って説明します。
この記事の結論
相続登記は、戸籍謄本一式・遺産分割協議書・固定資産評価証明書などをそろえ、登記申請書を作成して、不動産所在地を管轄する法務局へ提出して行います。窓口・郵送・オンラインいずれでも申請でき、自分で行うことも可能です。
この記事で分かること
- 相続登記申請の全体の流れ
- 遺産分割協議・法定相続分・遺言による場合の必要書類の違い
- 申請先(管轄法務局)の調べ方
- 窓口・郵送・オンライン申請の違い
- 自分で申請する場合と司法書士に依頼する場合の判断基準
相続登記申請の全体の流れ
1. 名義と相続人を確認する
登記事項証明書で実家の名義を確認し、戸籍を出生から死亡までさかのぼって相続人を確定します。
(目安:1〜2か月)
2. 遺産の分け方を決める
遺言書がある場合はその内容に従い、ない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、協議書を作成します。
3. 必要書類をそろえる
戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書など、次の章で説明する書類を集めます。
4. 登記申請書を作成する
法務局が公開している様式をもとに、不動産の表示、登記の目的、申請人の情報などを記載します。
5. 管轄法務局へ提出する
窓口・郵送・オンラインのいずれかの方法で提出します。
6. 登記識別情報通知を受け取る
審査が完了すると、新しい名義人あてに登記識別情報通知(権利証にあたる書類)が発行されます。
必要書類一覧
必要書類は、遺産の分け方によって変わります。
| 分け方 | 主な必要書類 |
|---|---|
| 遺産分割協議による場合 | 亡くなった方の戸籍謄本一式(出生〜死亡)、住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、不動産を取得する相続人の住民票、固定資産評価証明書 |
| 法定相続分どおりに相続する場合 | 上記のうち遺産分割協議書・印鑑証明書を除いたもの(相続人全員が法定相続分で共有名義になります) |
| 遺言書がある場合 | 遺言書(自筆証書遺言は家庭裁判所の検認済みのもの、または法務局の自筆証書遺言保管制度を利用したもの)、亡くなった方の死亡が分かる戸籍、不動産を取得する相続人の戸籍・住民票、固定資産評価証明書 |
法定相続情報一覧図を使うと書類がまとめやすくなります 法務局に戸籍一式を提出して「法定相続情報一覧図」の交付を受けておくと、以降の手続きでは戸籍謄本一式の代わりにこの一覧図の写し1枚を使えます。相続登記以外にも預貯金の解約など複数の手続きを控えている場合、早い段階で作成しておくと書類集めの手間を減らせます。
戸籍は本籍地を転々としている場合、複数の市区町村役場へ請求することになり、取得までに数週間かかることもあります。余裕を持って準備を始めてください。
申請先(管轄法務局)の調べ方
相続登記は、亡くなった方の住所地ではなく、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。実家が遠方にある場合も、申請する法務局は実家の所在地側です。
管轄がどの法務局にあたるかは、法務局のウェブサイトで住所から検索できます。複数の不動産(土地と建物、複数の地番など)がある場合、同じ管轄内であれば1通の申請書にまとめられることもあります。
申請方法:窓口・郵送・オンラインの違い
| 方法 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 窓口申請 | 法務局へ持参。その場で簡単な形式確認を受けられる場合がある | 近隣に管轄法務局がある、平日に訪問できる場合 |
| 郵送申請 | 書類一式を郵送で提出。返送用封筒の同封が必要 | 遠方に住んでいて法務局へ行けない場合 |
| オンライン申請 | 登記・供託オンライン申請システムを利用。専用ソフトでの作成が必要 | パソコン操作に慣れている場合。添付書類の一部は別送が必要になることが多い |
いずれの方法でも、申請書に不備があると法務局から補正の連絡が入り、再提出が必要になります。特に郵送・オンラインは窓口でのその場のやり取りができない分、書類の記載漏れがないか事前に見直しておくことが大切です。
登記申請書の書き方のポイント
登記申請書には、主に次の項目を記載します。
- 登記の目的:「所有権移転」など
- 原因:亡くなった日と「相続」
- 相続人(申請人)の氏名・住所
- 添付情報:登記原因証明情報、住所証明情報など
- 不動産の表示:登記事項証明書のとおりに正確に記載(地番・家屋番号など)
- 登録免許税:固定資産税評価額 × 0.4%(計算方法は相続登記の費用はいくら?で解説しています)
法務局のウェブサイトには、遺産分割協議編・法定相続編・遺贈編それぞれの記載例(見本)が公開されています。自分の状況に近い見本を確認しながら作成すると、記載漏れを防ぎやすくなります。
不動産の表示は登記事項証明書のとおりに正確に 住所と登記簿上の「地番」「家屋番号」は一致しないことがよくあります。申請書には必ず登記事項証明書に記載されたとおりの地番・家屋番号を書き写してください。住所(住居表示)のまま記載すると補正の対象になります。
自分で申請する場合と司法書士に依頼する場合
| ケース | 向いている進め方 |
|---|---|
| 相続人が少なく、遺産分割協議もまとまっている | 自分で申請しやすい |
| 名義が祖父母の代など数世代前のまま | 相続人が多くなりがちなため、司法書士への依頼が現実的 |
| 遺産分割協議が難航している、相続人と連絡が取れない人がいる | まず相続人と連絡が取れない場合の進め方を確認したうえで、専門家に相談 |
| 平日に法務局や役場へ行く時間が取れない | 郵送申請、または司法書士への依頼 |
自分で申請すれば司法書士報酬(目安5万〜10万円程度)を抑えられますが、戸籍の収集や申請書の作成には手間と時間がかかります。費用の詳細は相続登記の費用はいくら?で解説しています。
誰に相談するか
| 内容 | 相談先 |
|---|---|
| 申請書の作成・書類収集の代行 | 司法書士 |
| 管轄法務局の確認、様式の入手 | 法務局(窓口・ウェブサイト) |
| 固定資産評価証明書の取得 | 市区町村の税務担当窓口 |
| 遺産分割協議がまとまらない | 弁護士 |
よくある質問
Q. 申請してからどのくらいで登記が完了しますか。 A. 法務局や時期によって差がありますが、書類に不備がなければ1〜2週間程度が目安です。繁忙期はこれより時間がかかることがあります。
Q. 申請書に不備があるとどうなりますか。 A. 法務局から補正の連絡が入り、指定された期間内に修正すれば手続きを続けられます。連絡先の電話番号は必ず申請書に記載してください。
Q. 遺産分割協議がまとまる前に、とりあえず義務だけ果たす方法はありますか。 A. 「相続人申告登記」という簡易な手続きで、申請義務を先に果たすことができます。ただし、この申告だけでは実家を売却できず、後日あらためて相続登記が必要です。詳しくは実家を相続した後の期限一覧をご覧ください。
Q. オンライン申請は誰でもできますか。 A. 制度上は可能ですが、専用ソフトのインストールやマイナンバーカードによる電子署名など準備が必要です。パソコン操作に不慣れな場合は、窓口または郵送での申請のほうが進めやすいことが多いです。
まとめ・次にすること
- 相続登記は、必要書類をそろえ、登記申請書を作成し、不動産所在地の管轄法務局へ提出して行う
- 必要書類は遺産分割協議・法定相続分・遺言のどれによるかで変わる
- 窓口・郵送・オンラインのいずれでも申請できる
- 相続人が多い、協議が難航しているなどの場合は司法書士への依頼が現実的
次にすることは、登記事項証明書で名義を確認し、戸籍の収集を始めることです。書類集めが完了すれば、申請そのものは大きな負担にはなりません。