実家の登記事項証明書を取り寄せようとしたら、「該当する登記記録がありません」と言われた。名義が古いのとは違い、建物そのものが一度も登記されていない「未登記建物」であることが、相続をきっかけに分かるケースがあります。
この記事の結論
建物がそもそも登記されていない「未登記建物」の場合、まず土地家屋調査士に依頼して表題登記を行い、そのうえで司法書士が相続登記(所有権保存登記)を行う必要があります。通常の相続登記より書類集めに時間がかかることが多く、早めに着手することが大切です。
この記事で分かること
- 未登記建物と「名義が古いだけの建物」の違い
- 未登記建物が生まれる理由
- 売却までに必要な手続きと費用の目安
- 資料が見つからない場合の対応
「未登記建物」と「名義が古いだけ」は別の問題
「未登記」という言葉には、2つの意味が混同されがちです。
| 状態 | 内容 | 担当する専門家 |
|---|---|---|
| 未登記建物(表題登記なし) | 建物そのものが一度も登記されていない。登記事項証明書自体が存在しない | 土地家屋調査士(表題登記)→ 司法書士(保存登記) |
| 名義が古いまま(相続登記が未了) | 建物・土地の登記記録は存在するが、名義が祖父母の代のまま等になっている | 司法書士(相続登記) |
この記事で扱うのは前者、建物自体が登記されていないケースです。名義が祖父母の代のままになっている場合の手続きは、未登記・祖父名義の家を売却する方法で説明しています。
なぜ未登記建物が生まれるのか
建物を新築した場合、所有権を取得した日から1か月以内に表題登記を申請する義務があります(不動産登記法第47条)。しかし、この義務が守られないまま数十年が経過している建物が一定数存在します。特に次のようなケースで見られます。
- 増改築を繰り返した結果、建築時の書類が失われている
- 農村部の古い母屋、離れ、倉庫など、簡易な構造の建物
- 建築確認を受けずに建てられた建物
表題登記の申請義務を怠った場合、10万円以下の過料の対象となり得ますが(不動産登記法第164条)、実務上、この違反のみを理由に過料が科された例はほとんどないとされています。とはいえ、未登記のままでは売却・担保設定ができず、実際の不利益は大きくなります。
固定資産税は、登記の有無にかかわらず、市区町村が独自に行う家屋調査にもとづいて課税されます。そのため「税金を払っているから登記も済んでいるはずだ」と思い込み、相続の場面で初めて未登記に気づく方が少なくありません。
売却までに必要な手続き
1. 登記事項証明書の有無を確認する
法務局で登記事項証明書を請求し、「該当する登記記録がない」場合は未登記建物にあたります。
2. 土地家屋調査士に相談する
建物の表示に関する登記(表題登記)は、土地家屋調査士の専管業務です。現地調査・測量のうえ、申請書類を作成してもらいます。
3. 建築時期・構造を示す資料を集める
建築確認済証、固定資産税の課税明細、建築業者との契約書などが、表題登記の申請にあたって必要になります。
4. 表題登記を申請する
土地家屋調査士が、法務局へ表題登記を申請します。
5. 相続登記(所有権保存登記)を申請する
表題登記が完了した後、司法書士に依頼し、相続人名義での所有権保存登記を申請します。
6. 売却する
登記が完了して初めて、通常の売買契約を結べる状態になります。
費用と期間の目安
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 表題登記(土地家屋調査士への依頼) | 測量・調査の内容によって変動。通常の相続登記より書類作成・現地調査の手間が増える分、費用は高くなりやすい |
| 所有権保存登記(司法書士への依頼) | 通常の相続登記の費用に準じる |
| 期間 | 資料がそろっている場合でも1〜2か月程度、資料集めに時間がかかる場合はさらに長くなる |
古い建物ほど、建築時の資料(建築確認済証等)が残っていないことが多く、その場合は所有者の申述書や近隣の証言、固定資産税の課税資料などで代替する調査が必要になり、期間・費用がさらにかかることがあります。
資料が見つからない場合の対応
建築確認済証などの資料が一切見つからない場合でも、土地家屋調査士が現地調査・聞き取り等を行い、代替の資料で表題登記を進められることがあります。まずは資料の有無にかかわらず、早めに相談することをおすすめします。
建築業者が廃業していたり、当時の記録が破棄されていたりすると、資料集めはさらに難しくなります。時間が経つほど状況確認が難しくなるため、未登記であることに気づいた段階で、早めに着手することが結果的に負担を減らします。
誰に相談するか
| 内容 | 相談先 |
|---|---|
| 表題登記(建物の調査・測量・申請) | 土地家屋調査士 |
| 相続登記(所有権保存登記) | 司法書士 |
| 売却・査定 | 不動産会社 |
| 相続税の申告への影響 | 税理士 |
よくある質問
Q. 未登記建物のまま売却することはできますか。 A. 買主が住宅ローンを利用する場合など、実務上、未登記のままでの売却は難しいのが実情です。多くの場合、表題登記・保存登記を済ませてから売却することになります。
Q. 表題登記と相続登記は同時に進められますか。 A. 表題登記が完了していないと、その後の所有権保存登記(相続登記)を申請できません。順序としては表題登記が先になります。
Q. 未登記建物であることに気づかず固定資産税を払い続けていました。さかのぼって問題になりますか。 A. 固定資産税は登記の有無にかかわらず課税されているため、納税自体に問題はありません。売却・担保設定をする段階で登記が必要になる、という点が実務上の課題になります。
まとめ・次にすること
- 「未登記建物」は、名義が古いまま(相続登記未了)とは別の問題で、建物そのものが登記されていない状態です
- 売却には、土地家屋調査士による表題登記、その後の司法書士による相続登記(所有権保存登記)の順で手続きが必要です
- 建築時の資料が乏しい古い建物ほど、調査・書類集めに時間がかかる傾向があります
- 気づいた時点で、早めに土地家屋調査士へ相談することをおすすめします
まずは法務局で登記事項証明書を請求し、未登記建物にあたるかどうかを確認するところから始めてください。