登記事項証明書を取得してみたら、名義が親ではなく祖父母のままだった。これは決して珍しいことではありません。名義変更の手続きが行われないまま、何十年も経過している実家は多くあります。
この記事の結論
祖父母の代のまま名義が残っている場合、まず現在の相続人全員を確定させる必要があります。相続人の数が想定より多くなることが多いため、早めに司法書士へ相談することをおすすめします。
この記事で分かること
- 名義が古いままになる理由と「数次相続」の考え方
- 相続人が想定より増える理由
- 売却までに必要な手続き
- 相続人の一部と連絡が取れない場合
なぜ名義が古いままになるのか
相続登記は、2024年(令和6年)4月1日より前は義務ではありませんでした。そのため、「今すぐ売る予定がない」「手続きが面倒」という理由で、名義変更をしないまま放置されてきた不動産が多数存在します。
祖父が亡くなった時点で子(親の世代)に名義を移さず、さらにその親が亡くなった、というように、相続が複数回続けて発生している状態を「数次相続」と呼びます。
相続人が想定より増える理由
名義が祖父母の代のままだと、相続人は「今のきょうだい」だけでなく、祖父母の代の相続人全員(の相続人)になります。
具体例 祖父に子が3人(父、叔父、叔母)いた場合、祖父の相続人は本来3人でした。しかし名義変更をしないまま父も亡くなると、父の持分は父の相続人(あなたや兄弟姉妹)に引き継がれます。叔父・叔母がすでに亡くなっている場合は、その子(いとこ)にも相続権が発生します。
結果として、面識のない親族を含めて、相続人が5人、10人と増えることも珍しくありません。
相続人が増えるほど、全員から合意(遺産分割協議書への署名・押印)を得る手間が大きくなります。実際に相続人が9人に増えた例は、祖父名義のまま父も亡くなったモデルケースで紹介しています。
売却までに必要な手続き
1. 名義人(祖父母等)の戸籍を出生から死亡まで収集する
最初の相続がいつ発生したかを確認します。
2. 各段階の相続人を確定する
祖父母の相続人、その後亡くなった相続人の相続人、というように、段階ごとに確定していきます。
3. 現在の相続人全員を特定する
最終的に、今の時点で権利を持っている人全員をリストアップします。
4. 遺産分割協議を行う
全員で、誰が実家を取得するか(または売却して分けるか)を話し合います。
5. 相続登記を申請する
遺産分割の内容にもとづき、現在の相続人(または実家を取得する相続人)へ名義を移します。
6. 売却する
名義変更が完了して初めて、売買契約を結べます。
戸籍の収集だけでかなりの時間がかかるため、早めに着手することが重要です。司法書士に依頼すると、代わりに収集してもらえます。
相続登記の義務化との関係
2024年4月1日から相続登記が義務化されており、この施行日より前に発生していた相続についても対象です。名義が祖父母の代のままになっている場合、2027年(令和9年)3月31日までに相続登記を申請する必要があります。
期限内に遺産分割協議がまとまらない場合、相続人申告登記により、ひとまず申請義務を果たすことができます。ただし、これは相続人を登記所に知らせるだけの手続きで、この申告だけでは売却できません。売却には、あらためて遺産分割にもとづく相続登記が必要です。
詳しくは実家を相続した後の期限一覧をご覧ください。
相続人の一部と連絡が取れない場合
数次相続では、面識のない相続人(いとこ、大おじ・大おば等)が含まれることが珍しくありません。連絡先が分からない、連絡しても応答がない場合の対応は、相続人と連絡が取れない場合の進め方で説明しています。
誰に相談するか
| 内容 | 相談先 |
|---|---|
| 戸籍収集、相続人の確定、相続登記 | 司法書士 |
| 遺産分割協議がまとまらない場合 | 弁護士 |
| 名義変更後の売却 | 不動産会社 |
よくある質問
Q. 相続人の中に、判断能力が十分でない高齢の親族がいます。 A. 遺産分割協議には、本人の意思確認が必要です。判断能力に不安がある場合、成年後見制度の利用が必要になることがあります。弁護士・司法書士にご相談ください。
Q. 数次相続の場合、相続税の申告はどうなりますか。 A. 相続が複数回発生している場合、それぞれの相続について申告の要否を確認する必要があります。「相次相続控除」など、税額が調整される制度もあるため、税理士にご相談ください。
Q. すべての相続人の合意を得るのに、どのくらい時間がかかりますか。 A. 相続人の人数や、連絡の取りやすさによって大きく変わります。数か月で済むこともあれば、1年以上かかることもあります。早めに着手することが、期間短縮の最善策です。
まとめ・次にすること
- 名義が祖父母の代のままだと、相続人は数次相続により想定より増えることが多い
- 売却には、戸籍収集・相続人確定・遺産分割・相続登記の順で進める必要がある
- 2024年4月の義務化以前の相続も対象で、期限は2027年3月31日
- 相続人申告登記だけでは売却できない点に注意する
まずは名義人(祖父母等)の戸籍を出生から死亡まで取得することから始めてください。範囲が広い場合は、早めに司法書士に相談することをおすすめします。