実家の登記事項証明書(登記簿謄本)を取り寄せてみたら、すでに完済したはずの住宅ローンの「抵当権」が、権利部(乙区)に残ったままになっていた——という相談は少なくありません。相続登記のために書類を確認して初めて気づく方が多いテーマです。
この記事の結論
抵当権抹消登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円で、土地と建物がある実家では2,000円が目安です。住宅ローンを完済すると、金融機関から登記識別情報(登記済証)や委任状などの抹消書類一式が交付されるため、これをもとに法務局へ申請します。名義がまだ被相続人のままの場合は、先に相続登記を済ませてから抹消登記を行うのが基本です。
この記事で分かること
- 抵当権が登記簿に残ったままになる理由
- 抹消登記にかかる費用(登録免許税・司法書士報酬)
- 相続登記との順番の考え方
- 自分で申請する場合の必要書類と手順
なぜ完済しても抵当権が残ったままなのか
住宅ローンを完済しても、法務局の登記記録は自動的には更新されません。抵当権を消すには、所有者側が「抵当権抹消登記」を申請する必要があります。
親が実家の住宅ローンを組んでいて、団体信用生命保険(団信)に加入していた場合、死亡によって保険金でローンが完済され、抵当権はその時点で消滅します。ただし、これも登記簿上は残ったままになるため、抹消登記をしないと「完済したのに抵当権が付いた実家」という状態が続きます。
抹消登記には相続登記のような申請義務・期限はありません。そのため、完済から何年、何十年も手続きをせずに放置されているケースが珍しくありません。
抹消登記を放置するとどうなるか
放置すると書類の再発行に手間がかかることがあります 抹消登記に使う書類(登記識別情報通知・抵当権解除証書・金融機関の委任状など)は、完済時に金融機関から交付されたものをそのまま使います。年数が経つと、金融機関の合併・支店統廃合、担当部署の変更などにより、書類の再発行に時間と追加の手数料がかかることがあります。実家の売却時や相続登記の際に慌てないよう、気づいた時点で手続きすることをおすすめします。
売却を予定している場合は特に注意が必要です。買主への引き渡し前に抵当権を抹消しておかないと、決済(引き渡し)当日の手続きが煩雑になり、スケジュールに影響することがあります。
抹消登記にかかる費用
| 費用 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 登記の際に国に納める税金 | 不動産1個につき1,000円(土地・建物なら2,000円) |
| 必要書類の取得費用 | 登記事項証明書の確認等 | 数百円〜1,000円程度 |
| 司法書士報酬(依頼する場合) | 書類確認・申請の代行 | 1万5,000円〜3万円程度 |
登録免許税は、相続登記(固定資産税評価額の0.4%)のように評価額に比例するのではなく、不動産の個数に応じた定額(1個につき1,000円)です。土地が複数筆に分かれている場合は、その筆数分の税額がかかります。
相続登記との順番
名義がまだ被相続人のままなら、先に相続登記を済ませます 抵当権抹消登記の申請人(権利者)は、原則として現在の所有者です。実家の名義がまだ亡くなった親のままになっている場合は、先に相続登記(所有権移転登記)で自分たち相続人の名義に変えたうえで、抹消登記を申請するのが基本的な流れです。相続登記は2024年4月から義務化されており、相続の開始を知った日から3年以内に申請する必要があります。
相続登記と抹消登記は別々の登記なので、それぞれに登録免許税がかかります。まとめて司法書士に依頼すると、書類収集や法務局とのやり取りを一本化できます。
自分で申請する場合の必要書類と手順
1. 金融機関からの抹消書類一式を確認する
完済時に金融機関から交付された「登記識別情報通知(または登記済証)」「抵当権解除証書(弁済証書)」「委任状」「金融機関の資格証明書(代表者事項証明書)」がそろっているか確認します。見当たらない場合は、借りていた金融機関に再発行を相談してください。
2. 登記事項証明書で抵当権の内容を確認する
法務局で登記事項証明書を取得し、抹消したい抵当権の受付年月日・受付番号を確認します。
3. 登記申請書を作成する
法務局のホームページに記載例が公開されています。登記の目的(抵当権抹消)、原因(弁済等)、権利者・義務者の情報を記載します。
4. 法務局へ申請する
不動産の所在地を管轄する法務局へ、窓口・郵送・オンラインのいずれかで申請します。登録免許税分の収入印紙を申請書に貼付します。
5. 登記完了証を受け取る
申請から1〜2週間程度で手続きが完了し、登記完了証が交付されます。
誰に相談するか
| 内容 | 相談先 |
|---|---|
| 抹消登記の手続き代行 | 司法書士 |
| 抹消書類の再発行 | 住宅ローンを借りていた金融機関 |
| 相続登記とあわせた依頼 | 司法書士 |
よくある質問
Q. 抹消登記をしないまま実家を売却できますか。 A. 抵当権が付いたままでは、実務上ほとんどの場合で決済(引き渡し)が進められません。売却を予定している場合は、決済までに抹消登記を済ませておく必要があります。
Q. 抹消書類(登記識別情報など)を紛失した場合はどうすればよいですか。 A. 完済した金融機関に再発行を相談してください。金融機関が合併・解散している場合は、承継した金融機関や整理回収機構等に問い合わせが必要になることがあります。手続きが複雑になりやすいため、司法書士への相談をおすすめします。
Q. 相続登記と抵当権抹消登記は同時に申請できますか。 A. 名義変更(相続登記)と抹消登記は別の登記なので、順番に申請するのが原則です。まとめて司法書士に依頼すれば、申請のタイミングも含めて調整してもらえます。
まとめ・次にすること
- 抵当権抹消登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円が目安です
- 名義が被相続人のままなら、先に相続登記を済ませてから抹消登記を申請します
- 抹消書類は完済時に金融機関から交付されたものを使うため、見当たらない場合は早めに再発行を相談してください
まずは実家の登記事項証明書を取得し、抵当権が残っていないかを確認することから始めてください。