実家が「長屋」や「連棟式建物」と呼ばれる、隣の家と壁続きになっている建物だった場合、「普通の一戸建てと同じように売れるのか」「自分の家だけ解体できるのか」と戸惑うかもしれません。構造上、隣家とつながっている分だけ確認すべき点は増えますが、売却の道がないわけではありません。
この記事の結論
連棟式建物(長屋)は、隣接する住戸と壁や屋根、基礎の一部でつながっており、単独で解体・建て替えするのが難しい建物です。まず法務局で登記の状態(区分登記か、一棟のままの登記か)を確認したうえで、現況のまま仲介・買取で売却する、隣接住戸の所有者に売却を打診するなど、切り離しを前提にしない方法から検討するのが現実的です。
この記事で分かること
- 連棟式建物・長屋とはどういう建物か
- 売却が難しくなる理由
- 売却前に確認しておくべきこと
- 処分の選択肢と、それぞれの向き不向き
連棟式建物・長屋とはどういう建物か
「長屋」は、2戸以上の住戸が壁を共有しながら1棟に連なっている建物で、各住戸が共用の廊下や階段を通らず、それぞれ独立した出入口を持つ点がアパート・マンションなどの「共同住宅」との違いです。テラスハウスも、この長屋の一種にあたります。
登記のされ方は物件によって異なり、大きく次のパターンがあります。
| 登記のパターン | 内容 |
|---|---|
| 各住戸が別々の建物として登記されている | 隣の住戸とは別の「1個の建物」として扱われる。比較的、単独での売却・解体がしやすい |
| 1棟の建物として区分登記されている | マンションと同様に、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)が適用される可能性がある |
| 一棟の建物を複数人で共有登記している | 相続の経緯などで、隣接住戸との関係が権利上も複雑になっていることがある |
自分の実家がどのパターンにあたるかは、登記事項証明書を見ただけでは分かりにくいこともあるため、判断に迷う場合は司法書士に確認することをおすすめします。
連棟式建物・長屋の売却が難しくなる理由
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 単独で解体しにくい | 隣接住戸と壁・屋根・基礎の一部が構造的につながっており、自分の住戸だけ解体すると隣家の外壁や防水に影響が出ることがある |
| 切り離し工事が別途必要になる | 解体・建て替えの前提として、界壁の補強や防水などの「切り離し工事」が必要になり、通常の解体より費用がかさむ場合がある |
| 建て替えに制約が出ることがある | 区分所有登記されている場合、建替えには区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成(建替え決議)が必要になることがある |
| 住宅ローンの担保評価に影響する | 隣接住戸の老朽化状況や空き家の有無が、金融機関の担保評価に影響することがある |
| 買い手の心理的な抵抗 | 将来の建て替え・修繕の自由度が低いと見られやすく、検討対象から外されることがある |
連棟式建物そのものに違法性があるわけではありません。ただし、「単独で自由に建て替えられるか」が分かりにくいことが、買い手を遠ざける最大の理由です。
区分所有登記されている連棟式建物は、区分所有法が適用される可能性がありますが、実際に適用されるかどうかは建物の構造や利用実態によって判断が分かれる、専門的な論点です。「うちは長屋だから区分所有法とは無関係」と決めつけず、疑問がある場合は司法書士や弁護士に確認してください。
売却前に確認すること
1. 登記事項証明書を取得し、登記の状態を確認する
法務局で登記事項証明書を取得し、自分の実家が単独の建物として登記されているか、隣接住戸と区分登記・共有登記になっているかを確認します。
2. 隣接住戸の所有者・居住状況を確認する
隣が空き家なのか、誰かが住んでいるのかによって、売却の進めやすさや相談相手が変わります。登記事項証明書で所有者を確認できます。
3. 切り離し工事の要否と概算費用を確認する
解体や建て替えを視野に入れる場合、施工業者や解体業者に、切り離し工事が必要かどうか、必要な場合の概算費用を確認しておきます。
4. 訳あり物件の取り扱いに慣れた不動産会社に相談する
通常の仲介会社では取り扱いに慣れていないこともあるため、連棟式建物・長屋の売却実績がある不動産会社に、複数社査定を依頼することをおすすめします。
処分の選択肢
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| 現況のまま仲介で売却する | 連棟であることを開示したうえで、時間をかけて買い手を探す方法。訳あり物件に強い不動産会社が向く |
| 買取業者に売却する | 訳あり物件専門の買取業者であれば、連棟のままでも現況で買い取ってもらえることがある。仲介より価格は下がりやすい |
| 隣接住戸の所有者に売却を打診する | 隣家がまとめて取得すれば切り離しの問題がなくなるため、通常より高い関心を示すことがある |
| 切り離し工事をしてから売却する | 追加費用はかかるが、単独の建物として売りやすくなる可能性がある。工事前後の想定価格を不動産会社に確認したうえで判断する |
連棟式建物の売却について相談してみる
連棟式建物の売却について相談してみる株式会社ネクサスプロパティマネジメントの公式サイトへ移動します
広告:株式会社ネクサスプロパティマネジメント(A8.net)
相続時に確認しておきたいこと
遺産分割で、連棟の一部の住戸だけを特定の相続人が取得することもあります。その場合、将来の売却・建て替えに上記のような制約がある点を、相続人間であらかじめ共有しておくと、後になって「こんなはずではなかった」というトラブルを避けやすくなります。
誰に相談するか
| 内容 | 相談先 |
|---|---|
| 登記の状態、区分所有法の適用有無 | 司法書士、弁護士 |
| 切り離し工事の要否・概算費用 | 解体業者、建築士 |
| 売却・買取の相談 | 訳あり物件の取り扱いに慣れた不動産会社 |
よくある質問
Q. 連棟式建物は必ず区分所有法の対象になりますか。 A. 登記の状態や建物の構造・利用実態によって判断が分かれます。疑問がある場合は司法書士や弁護士に確認することをおすすめします。
Q. 隣の住戸が空き家で放置されている場合、何かできることはありますか。 A. 登記事項証明書で所有者を確認し、直接連絡を試みる方法があります。所有者が分からない、連絡が取れない場合は、実家がある自治体の空き家相談窓口に相談する方法もあります。
Q. 切り離し工事をすれば必ず高く売れますか。 A. 費用に見合うだけ価格が上がるとは限りません。工事の前後でどの程度価格が変わりそうか、不動産会社に確認してから判断することをおすすめします。
まとめ・次にすること
- 長屋・連棟式建物は、隣接住戸と壁や屋根、基礎の一部でつながっており、単独での解体・建て替えが難しい建物です
- まず登記事項証明書で、自分の実家がどのように登記されているかを確認してください
- 区分所有登記されている場合、区分所有法が適用される可能性があり、建て替えには一定多数の賛成が必要になることがあります
- 切り離しを前提にしない売却方法(現況売却、買取、隣接所有者への打診)から検討し、訳あり物件の取り扱いに慣れた不動産会社に相談することをおすすめします