親と同居するために建てた二世帯住宅を相続すると、「自分たち家族はこのまま住み続けたいが、兄弟姉妹にも取り分がある」という状況になりやすく、戸建てや区分マンションの相続とは異なる悩みが出てきます。まず確認すべきは、建物の登記がどうなっているかです。
この記事の結論
二世帯住宅は、建物が「区分所有登記」されているかどうかで、相続税の特例の使いやすさや、売却・分割のしやすさが大きく変わります。片方の世帯だけが住み続ける場合は、代償分割で単独名義にする、賃貸に出す、売却するなどの選択肢を、登記の状態とあわせて検討する必要があります。
この記事で分かること
- 二世帯住宅の3つの登記パターンと、それぞれの違い
- 区分所有登記されている場合に注意したい相続税の特例の要件
- 片方の世帯だけ住み続ける場合の主な選択肢
- 区分所有登記を解消する方法
二世帯住宅の登記パターンを確認する
二世帯住宅は、建築時にどう登記したかによって、相続の進めやすさが大きく変わります。まず登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、どのパターンにあたるか確認してください。
| 登記パターン | 内容 | 相続の進めやすさ |
|---|---|---|
| 単独登記 | 建物全体が親(被相続人)1人の名義 | 通常の戸建てと同様に、遺産分割協議で扱いを決める |
| 共有登記 | 建物全体を親子など複数人で共有名義にしている | 持分に応じて相続。もともと共有だった持分は相続の対象外 |
| 区分所有登記 | 1階部分・2階部分などを別々の建物として登記(親世帯と子世帯で別々の名義) | 子世帯の持分はもともと別名義のため、相続の対象は親世帯部分のみ |
区分所有登記になっている場合、たとえば1階(親名義)だけが相続の対象になり、2階(子名義)はもとから子のものとして扱われます。一見シンプルに思えますが、後述するとおり相続税の特例の適用に影響することがあるため注意が必要です。
区分所有登記されている場合に注意したいこと
被相続人が住んでいた敷地について相続税評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」は、原則として建物が区分所有登記されている場合には適用できません。区分所有登記されていなければ、生計が別の完全分離型の二世帯住宅であっても、親世帯・子世帯それぞれの居住部分に対応する敷地について特例の対象になり得ます。
つまり、同じような間取り・使い方の二世帯住宅でも、登記の仕方だけで相続税の負担が大きく変わることがあります。小規模宅地等の特例の要件全体については小規模宅地等の特例とはで解説しています。
すでに区分所有登記になっている二世帯住宅で、相続開始前に特例を使えるようにしたい場合は、区分所有登記を「合併登記」によって一つの建物の登記に統一する方法があります(後述)。ただし手続きには時間がかかるため、相続が発生してからでは間に合わないこともあります。
片方の世帯だけ住み続ける場合の選択肢
親が亡くなり、子世帯(多くは長男・長女など)がそのまま住み続けたいが、他の兄弟姉妹にも相続分がある、というケースでは、次のような選択肢があります。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| 代償分割 | 住み続ける相続人が建物・土地を単独で取得し、他の相続人には代償金を支払う |
| 賃貸に出す(住まない部分) | 親世帯が使っていた部分を賃貸に出し、収益を相続人間で分配する |
| 売却して分ける(換価分割) | 住み続ける予定がない場合、売却して現金で分ける |
| 共有名義のまま維持する | 一時的な選択としてはあり得るが、将来の売却・建て替えで意見がまとまりにくくなる |
共有名義のまま維持する方法は、当面の対立を避けられる一方、将来の売却・建て替え・大規模修繕には共有者全員の同意が必要になり、時間が経つほど話し合いが難しくなる傾向があります。長期的に住み続ける意思がある場合は、早めに代償分割で単独名義にしておくことをおすすめします。 共有名義の一般的な整理方法は実家の共有名義を解消する方法で解説しています。
代償分割を選ぶ場合、建物・土地の評価額をもとに代償金を計算します。二世帯住宅は建物が大きく評価額も高くなりやすいため、住み続ける相続人がまとまった代償金を用意できるかが実務上のハードルになります。不動産担保ローンなどで資金を準備するケースもあります。
誰も住まない場合の売却の進め方
親世帯・子世帯のいずれも今後住む予定がなくなった場合は、売却も選択肢になります。二世帯住宅は間取りが特殊なため、通常の戸建てより買い手が限られる傾向がありますが、次のような需要もあります。
- 別の二世帯・三世帯で住みたい家族
- 賃貸併用住宅として活用したい投資家
- 区分所有登記の場合は、片方の区画だけを売却できる可能性もある
区分所有登記されている二世帯住宅で片方の区画だけを売却する場合、隣接する区画の所有者(多くは親族)との調整が必要になることが多く、通常の戸建て売却より事前準備に時間がかかります。早めに不動産会社へ相談し、査定と合わせて売却のしやすさを確認しておくと安心です。
区分所有登記を解消する方法
区分所有登記になっている二世帯住宅を、1つの建物の登記にまとめる「合併登記」という手続きがあります。
1. 建物の現況を確認する
区分所有登記のままでよいか、合併したほうがよいかを、税理士・司法書士に相談しながら検討します。
2. 合併登記に必要な書類を準備する
登記事項証明書、建物図面など、法務局に提出する書類を土地家屋調査士・司法書士に依頼して準備します。
3. 法務局へ合併登記を申請する
専門家に依頼するのが一般的です。区分所有の解消には、共有者(親世帯・子世帯)双方の合意が前提になります。
合併登記は、相続が発生する前(親が元気なうち)に検討・実行しておくことが望ましい手続きです。相続開始後に慌てて進めようとすると、相続税の申告期限(10か月)に間に合わない可能性があります。すでに親を亡くしている場合は、合併登記にこだわらず、他の選択肢とあわせて税理士に相談してください。
誰に相談するか
| 内容 | 相談先 |
|---|---|
| 相続税の特例の適用可否、代償分割の税務上の影響 | 税理士 |
| 登記の状態確認、相続登記、合併登記 | 司法書士、土地家屋調査士 |
| 売却の相談、査定 | 不動産会社 |
| 兄弟姉妹間の話し合いがまとまらない場合 | 弁護士 |
よくある質問
Q. 二世帯住宅を売却すると、小規模宅地等の特例はどうなりますか。 A. 相続税の申告期限までに売却してしまうと、原則として同居していた親族の要件(申告期限までの保有・居住)を満たせず、特例が使えなくなる可能性があります。売却のタイミングは、税理士に相談してから決めることをおすすめします。
Q. 区分所有登記かどうかは、どうやって確認できますか。 A. 法務局で建物の登記事項証明書を取得すると分かります。1階部分・2階部分などが別々の建物として登記されている場合は、区分所有登記です。
Q. 代償金を用意できない場合、他にどんな方法がありますか。 A. 住み続ける部分以外を賃貸に出して収益を分配する方法や、最終的に売却して現金で分ける方法(換価分割)があります。まとまった資金がすぐに用意できない場合は、早めに他の相続人と相談してください。
まとめ・次にすること
- 二世帯住宅は「単独登記」「共有登記」「区分所有登記」のいずれかで、相続の進めやすさが変わります
- 区分所有登記されている場合、原則として小規模宅地等の特例が使えない点に注意してください
- 片方の世帯だけ住み続ける場合は、代償分割で単独名義にするのが基本的な選択肢です
- 売却・賃貸・登記の解消(合併登記)など、状況に応じて専門家に相談しながら進めてください