このページについて 以下は、複数のよくある相談内容をもとに編集部が再構成した架空の設例です。実際にあった相談事例ではありません。登場する人物・地名は仮のものであり、金額・期間は状況によって大きく異なります。
このモデルケースの結論
父の死後、20年以上音信不通だった叔父(父の弟)が相続人に含まれていたものの所在が分からず、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てて遺産分割協議を進めたモデルケースです。選任から協議成立まで半年以上かかりました。
経過(時系列)
戸籍調査で叔父の存在が判明(1か月目)
父の相続人を確定するために戸籍を集めたところ、疎遠になっていた叔父(父の弟)が存命であれば相続人に含まれることが分かった。最後に分かっている住所宛てに手紙を送ったが、返送されてきた。
住民票・戸籍の附票で所在を調査(2か月目)
司法書士に依頼し、叔父の戸籍の附票(本籍地での住所履歴)を取得したが、記載の住所にはすでに住んでおらず、転居先の記録も追えなかった。
不在者財産管理人の選任を申し立て(3〜4か月目)
生死は不明だが失踪宣告の要件(生死不明7年以上)は満たしていなかったため、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てた。家庭裁判所が地元の弁護士を管理人として選任した。
管理人を交えた遺産分割協議(5〜7か月目)
不在者財産管理人は、叔父の法定相続分(相続財産の一定割合)を下回らない内容でなければ協議に応じられない立場のため、実家を売却して代金を法定相続分どおりに分ける「換価分割」で合意した。
家庭裁判所の許可・売却・分配(8〜9か月目)
遺産分割協議の内容について家庭裁判所の許可を得たうえで、相続登記(いったん3人の共有名義)を行い、実家を売却して売却代金を3人(叔父の分は管理人が保管)で分配した。
このモデルケースのポイント
- 連絡が取れない相続人がいても、住民票・戸籍の附票の調査を飛ばして手続きを進めることはできない
- 生死不明が7年未満の場合は失踪宣告ではなく、不在者財産管理人の選任が現実的な選択肢になる
- 不在者財産管理人がついた場合、遺産分割の内容は法定相続分を下回らない範囲に事実上限定される
- 不動産を残す形の分割は管理人が同意しにくいため、売却して分ける換価分割になりやすい
所在調査の具体的な方法や、失踪宣告との違いは、相続人と連絡が取れない場合の進め方で詳しく解説しています。
費用の目安(このケースの場合)
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 戸籍・戸籍の附票の取得 | 数千円程度 |
| 不在者財産管理人選任の申立て(家庭裁判所への予納金) | 数十万円程度(管理財産の内容によって家庭裁判所が判断) |
| 不在者財産管理人への報酬 | 管理財産(このケースでは売却代金の一部)から支払われることが多い |
| 弁護士・司法書士への依頼費用 | 申立て書類作成等で10万〜20万円程度 |
予納金は、管理人の業務終了後に余りがあれば戻ってくる場合がありますが、事前にまとまった金額を用意する必要がある点に注意してください。
不在者財産管理人以外の選択肢
生死不明の期間が7年以上続いている場合は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てる方法もあります。失踪宣告が認められると法律上死亡したものとみなされ、その人の相続人(子など)が代わりに手続きに参加することになります。どちらが適しているかは、行方不明になってからの期間や状況によって異なるため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ・次にすること
- 連絡が取れない相続人がいても、遺産分割協議は相続人全員の関与なしには進められません
- まず住民票・戸籍の附票で所在を調べ、それでも分からない場合に家庭裁判所への申立てを検討します
- 生死不明7年未満は不在者財産管理人、7年以上は失踪宣告が選択肢になります
- 不在者財産管理人がつくと、不動産を残す分割より売却して分ける換価分割になりやすい傾向があります