このページについて 以下は、複数のよくある相談内容をもとに編集部が再構成した架空の設例です。実際にあった相談事例ではありません。登場する人物・地名は仮のものであり、金額・期間は状況によって大きく異なります。
このモデルケースの結論
実家の宅地に隣接する田を一緒に相続し、農業をする予定がなかったため、農業委員会に届出・許可の手続きを行ったうえで、宅地は不動産会社の仲介で、農地は近隣の農家への売却で処分したモデルケースです。宅地と農地で手続きも売却先も別々に進めました。
経過(時系列)
相続登記と同時に農業委員会へ届出(2〜3か月目)
相続登記を終えたあと、農地法の規定により、農地を相続で取得したことを農業委員会に届け出た(届出の期限は取得を知った日から10か月以内)。届出をしないと過料の対象になり得ることを司法書士から教わり、早めに対応した。
農地の活用方針を検討(3〜4か月目)
自分で耕作する予定がないことを踏まえ、農業委員会の窓口に相談。農地バンク(農地中間管理機構)を通じた貸し付けと、売却の両方の選択肢を案内された。
宅地と農地を分けて売却先を検討(4〜6か月目)
宅地部分は近隣の不動産会社に査定を依頼し、通常の仲介で買主を探すことにした。農地部分は宅地と切り離し、隣接する田を持つ近隣農家に「買い増ししたい人がいないか」を農業委員会経由で確認してもらった。
農地の売買には農業委員会の許可(7〜8か月目)
近隣農家から購入の申し出があり、農地法第3条の許可(農地のまま権利を移す場合の許可)を得るための申請を行った。買主が農業に従事していることが要件を満たしており、許可はスムーズに下りた。
宅地の売却・引き渡し(8〜10か月目)
並行して進めていた宅地の売却も買主が決まり、農地の許可が下りたタイミングに合わせて両方の引き渡しを行った。
このモデルケースのポイント
- 農地を相続したら、農業をする・しないにかかわらず農業委員会への届出が必要(10か月以内、怠ると過料の対象)
- 農地の売買・貸借には、原則として農業委員会(転用を伴う場合は都道府県知事等)の許可が必要
- 買主が農業に従事している人(農家)に限られるなど、宅地とは異なる制約がある
- 宅地と農地で売却先・手続きが異なる場合、無理に一括で進めず別々に検討したほうがスムーズ
農地の届出・許可の仕組みは、相続した農地を売る・貸す方法で詳しく解説しています。
費用の目安(このケースの場合)
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 農業委員会への相続届出 | 無料(自分で提出する場合) |
| 農地法第3条許可の申請 | 数千円程度の手数料(自治体による) |
| 宅地の仲介手数料 | 売却価格 × 3%+6万円+消費税(上限額) |
| 農地の売買仲介(不動産会社を介す場合) | 農地専門または地元の不動産会社に別途確認が必要 |
農地の売買は一般の不動産会社では取り扱いが少ないため、農業委員会や地元のJA(農業協同組合)に相談すると、買い手の情報が得られることがあります。
農地を持て余す場合の他の選択肢
買い手がすぐに見つからない場合、農地バンク(農地中間管理機構)に貸し出す方法や、周辺の状況によっては農地のまま国庫に帰属させる相続土地国庫帰属制度の対象になることもあります。詳しくは相続土地国庫帰属制度とはをご覧ください。
まとめ・次にすること
- 農地を相続したら、農業をする予定がなくても農業委員会への届出が必要です(10か月以内)
- 農地の売買・貸借には農業委員会等の許可が必要で、買主は農業従事者に限られることが一般的です
- 宅地と農地は制度も売却先も異なるため、分けて検討すると進めやすくなります
- 買い手が見つからない場合は、農地バンクや相続土地国庫帰属制度も選択肢になります