このページについて 以下は、複数のよくある相談内容をもとに編集部が再構成した架空の設例です。実際にあった相談事例ではありません。登場する人物・地名は仮のものであり、金額・期間は状況によって大きく異なります。
このモデルケースの結論
相続財産の大部分を実家不動産が占め、現金だけでは相続税を一括納付できなかったため、申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10か月以内)に間に合うよう実家を売却し、その代金を納税資金にあてたモデルケースです。延納・物納も検討しましたが、担保提供などの手続き負担を踏まえ、早期の売却を選びました。
経過(時系列)
相続発生・財産の把握(1〜2か月目)
戸籍を集めて相続人を確定しながら、実家の登記事項証明書や預貯金の残高を確認。相続財産のほとんどを実家不動産が占め、現金・預貯金は諸費用を賄える程度しか残っていないことが分かった。
税理士への相談・申告要否の確認(2〜3か月目)
税理士に相談し、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるため申告が必要と判明。おおよその相続税額を試算したところ、手元の現金だけでは一括納付が難しい金額だった。
納税方法の比較(3〜4か月目)
現金一括納付が難しい場合の制度として、分割で納める「延納」と、不動産そのもので納める「物納」があることを税理士から説明された。延納は利子税や担保の提供が必要になること、物納は要件が細かく審査に時間がかかることを踏まえ、実家を売却して現金で納付する方針に決めた。
売却活動の開始(4〜7か月目)
複数の不動産会社に査定を依頼し、仲介での売却活動を開始。申告期限までに現金化する必要があったため、仲介で買い手が見つからない場合に備えて買取業者にも並行して相談した。
売買契約・決済(7〜9か月目)
仲介で買主が見つかり、売買契約・決済を行った。決済で受け取った代金の一部を、相続税の納税資金として確保した。
相続税の申告・納付(10か月目)
売却代金をもとに、申告期限までに税務署へ申告書を提出し、相続税を現金で一括納付した。
このモデルケースのポイント
- 相続税は原則として現金による一括納付が求められ、不動産という「モノ」を持っていても、現金がなければ納税はできない
- 相続開始後、早い段階で税理士に相談し、申告要否とおおよその納税額を把握したことで、売却の必要性に早く気づけた
- 申告期限(10か月)に間に合わせるため、仲介だけでなく買取も選択肢に入れて動いたことで、時間的な余裕を確保できた
延納・物納の制度そのものは、要件を満たせば有効な選択肢になり得ます。ただし、延納には利子税の負担や担保の提供、物納には対象財産の要件など、それぞれ準備と審査に時間がかかる点を踏まえて比較する必要があります。
費用・期間の目安(このケースの場合)
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 相続開始から申告期限までの期間 | 10か月 |
| 相続発生から売却の決済までの期間 | 約9か月 |
| 仲介手数料 | 売却価格 × 3%+6万円+消費税(上限額) |
| 延納を選んだ場合にかかる利子税 | 相続財産に占める不動産の割合等に応じた年率(要件により変動) |
申告期限ぎりぎりでの決済は、買主側の事情(住宅ローン審査の遅れなど)で予定がずれるリスクもあります。納税資金を目的に売却する場合は、期限の2〜3か月前を目安に決済を終えられるよう、早めに動き出すことが重要です。
もし期限までに売却が間に合わない場合
このケースでは期限内に決済まで終えられましたが、売却活動が長引き、申告期限までに現金化が間に合わない場合もあります。その場合は、いったん延納を申請して納付を分割し、売却できた時点で繰上げ返済する方法や、税理士に相談したうえで申告期限の直前に取れる対応を検討する方法があります。いずれも事前の準備が必要なため、納税資金が不足しそうだと分かった時点で、早めに税理士へ相談してください。
まとめ・次にすること
- 相続財産の大部分が不動産で、現金が少ない場合は、相続税の一括納付が難しくなることがある
- 延納・物納という制度もあるが、利子税や担保の提供、審査など準備に時間がかかる
- 申告期限(10か月)に間に合わせるには、仲介と買取を並行して検討するなど、早めに売却活動を始めることが重要
- 相続開始後、早い段階で税理士に相談し、おおよその納税額を把握しておくと、資金計画が立てやすい
相続税の申告期限から3年(相続開始からおおむね3年10か月)以内に不動産を売却すると、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例もあります。売却のタイミングを検討する際は、あわせて確認しておくとよいでしょう。